エンジンオイル編

エンジンチューンの基礎、それがエンジンオイル選びです。
車種や走る目的、季節に合わせて選びましょう。
毎回違うオイルを入れて、自分好みのオイルを発見するのも楽しいです。

一番大事なのは、雑誌や評論家の意見は参考にしかならないと言うことです。
レポートに使用する車両が違ったり、走行距離も少なかったり、サーキット走らせたりと条件が違います。

高価なオイル=高性能は当たり前ですが、低価格=低品質ではありません。
自分の五感を頼りに選びましょう。

市販されているオイルのほとんどは、各種の規格をクリアーしているので品質には問題有りません。
画像のオイル缶、BP Vervis Plusを例に、オイルの規格を説明します。

缶の表示は10W−40 SJ 部分合成油4サイクルガソリン専用とあります。
まず10W−40は、SAE(アメリカ自動車技術新協会)の定めたマルチグレードオイルの温度適正を表します。
10WWINTER(冬って意味です)で、最高粘度を−20℃に設定しています。
続いて40ですが、100℃の高温時・SUMMER(夏ですね)での粘度が12.5〜16.3有ることとなっています。
次のSJAPI(米国石油協会)の定めたオイルの品質基準で、使用目的によって9種類中に分けられています。

部分合成油とは、天然の石油から精製した鉱物油と、人工的に作られた化学合成油とのブレンド(混合)という意味です。

4サイクルガソリン専用とは、燃料と混合して使う2サイクルオイルと区別するために表示されています。
現在ほとんどの4輪自動車は4サイクルエンジンを使用しています。
マルチグレードとは、エンジン始動直後の冷間時から、エンジンが通常作動時の高温時までの幅広い温度域で性能を発揮するオイルです。
10W−40とか、5W−30とか表示されています。

この温度域表示ですが、10W−40の表示は10℃〜40℃という意味ではなく、それぞれが低温時と高温時の粘度を表しています。
この粘度はSAEなどで決められた、マルチグレード粘度表に設定されています。

シングルグレードはSAE30などと表示され、エンジンが通常作動時の高温時に性能を発揮するオイルで、マルチグレードが登場した現在は、すっかり廃れてしまいました。
夏冬でオイルを入れ替えなければならず、エンジンが冷えているときには粘度が異常に高く、始動性も悪いからです。

一般的には高回転型や小排気量のエンジン、自然吸気(NA)はエンジン内部のオイルの粘りによる抵抗を嫌い柔らかめを選びます。
対して大排気量車や過給器付き(ターボ&スーパーチャージャー)は、高温高負荷時の油膜切れを嫌って、硬めのオイルを選ぶようです。

ただ、エンジン焼き付きを防ぐ油膜保持力は、必ずしもオイルの粘度と比例していないません。
油膜保持力は、ベースオイルの性質や添加剤の種類によって決まります。

マルチグレードとはいえ、地域によっては低温時(冬)と高温時(夏)の温度差が大きいので、冬は柔らかめ、夏は硬めに交換する必要があるでしょう。
私の実家(北海道北見市)の場合、冬−30℃以下から夏+30℃以上という極端な温度差があります。
この様な場合、低温時の数値(W表示側)を小さくすると、低温時のエンジン始動性が向上します。
鉱物オイル
オイルの原料は原油です。
その原油を精製し、ガスやガソリンなどの揮発油を抜き取った後に残ったオイルを原料にしているのが鉱物油です。
基本となるベースオイルが天然物なので、分子の種類や大きさがそろっていません。
時間と共に劣化し、熱や外部要素に弱く、安定性が低いオイルです。
添加剤も強力な物が含まれていないため、シールやパッキンなどに対する攻撃性も低いですし、分子の大きさが不揃いなので、エンジンからの油漏れが発生しに
くいです。
コストも当然安く、油漏れが気になる旧車や、頻繁にオイル交換するクルマに向いています。

化学合成油
画像のオイル缶は、代表的な100%化学合成油 MOTUL 300V POWER RACINGです。
原油製油時に生成した物質から分子を合成し、人工的に作られたオイルが化学合成油です。
人工的に作られたベースオイルは、分子が安定していて劣化が少なく、高温にも耐えられる性質があります。
ベースオイルが安定しているため、強力な添加剤を使え、その効果も出しやすいです。
逆に旧車などでパッキン類の材質が弱いクルマや、エンジンの組み付け精度が悪いと、パッキンを侵したりオイル漏れの原因となります。
それだけ洗浄性能も高いということです。
また製造コストが高く、価格が高いのが欠点です。
部分合成油
天然物の鉱物油と人工物の化学合成油をブレンド
した物、それが部分合成油です。
2つのオイルの特徴を持ち、鉱物油の低コストと化学合成油の安定性をバランス良く持っていて、万人向けといえます。
中途半端な性能はお約束ですが。

その他のオイル
一部植物性の物も有りますが、酸化による劣化が早
く一般的では有りません。

オイルの種類によって得意不得意が有りますし、街乗りとか競技用とか使用条件も考えて選びましょう。
単純にレース用のオイルを入れたからって、馬力が上がるわけではありません。
自分で選んで納得したオイル。
それが一番です。

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